休職から復帰まで
【休職の前に休養を】
こころの病で休職する際、診察の場面で、院長が説明する一般的な内容を、記載して参ります。実際の診療では、お一人おひとりの状況に合わせて追加して説明致します。
こころ病の治療の基本は、第1に休養、第2に薬物療法です。
時に第1が薬物療法、第2が休養となることや、最初から入院をしていただかなければならないこともありますので、あくまで一般の話です。実際には、患者さまや、時にご家族、上司の方と相談しながら決めていくこともよくあります。
休養というと、安静を思い浮かべるかもしれませんが、だるさが強いときなどは別として、リラックスできることであれば休養になります。
休養について言えば、仕事をしながら仕事量の軽減や、残業の制限など様々な休み方があります。
しかしながら、それでは対処しきれず、休職をしなければならない場合もあります。
さて、休職をした方がいい状態かどうかは、診察をしながら、診断をし決めていく必要があります。
うつ病と似たような症状はあるものの、休職しない方がいいだろうと判断する場合があるのです。
休職から復職までの過程で、特別な治療ということは行っていないのですが、一般外来の範囲で短時間の精神療法を行い、精神分析理論を応用したり、認知行動療法的アプローチを行って参ります。
何度も申し上げますが、実際の診察は、原則通り行かないことが多いことを知っておいてください。
また、患者さまが独自に行っていることが、とてもいいことで、そこから私が学ぶこともたくさんあります。そのような事例は、、プライバシーに配慮した上で他の患者さまにもこんな手があるということを伝えるようにしています。
【休職するにあたって】
診察時、病状から仕事に耐えられないと医師が判断した場合、休職した方がよいとお伝えします。
患者さまと相談の上で休職(自宅療養)を要するという診断書を記載することが多いのです。
(休職の診断書を記載しても、引き継ぎなどで仕事に行かなければならない場合上司の指示に従う必要があります)
その際、休職するかどうか迷っていらっしゃる場合は、上司とも相談していただくこともありますし、企業の中には診断書がいらないという場合もありますので、記載する前に先に相談していただくこともあります。
休職の期間は人それぞれでまちまちですが、短い期間の休職だと、すぐに復職のことを考えて焦ってしまうため注意が必要です。
収入が無くなることが不安で休職に踏み切れない方がいらっしゃいます。社会保険に加入している場合、傷病手当金を請求できるかもしれません。また、それ以上の制度を有している企業もございます。
この件につきましては医師または受付事務員にご相談下さい。
【休職しはじめのころ】
休職の最初の時期は疲弊しきっている状態であることが多いため、ゆっくり寝て、食事を摂ることなど、規則正しい生活をしていただくことが大切です。
この時期、昼夜逆転さえしなければ、昼であっても安静にしたり、眠ってもかまいません。
時に、音や光などの刺激に敏感になっていることも多いため、ご自身の力だけで休養できない場合は、ご家族などにもご協力いただく場合もありますし、抗不安薬(いわゆる精神安定剤)を多めに出さなければならない場合もあります。
繰り返しになりますが、
1.身体を休めること (極端な話をすれば昼夜逆転しなければ、1日ねていてもかまわない)
2.食事を摂ること (食欲がないことが多いのですがここだけは頑張って食べましょう。)
食事回数を増やすなどの工夫をしてもいいかもしれませんし、栄養のバランスが崩れても何とか体重を維持する程度食べていただきたいのです。
この間の過ごし方は、患者さまご自身不安なことや、悲観的な考えが多く出てくるため、当院では1-2週間ごとに来院していただき、病状の確認や、休息の取り方について話し合う時期になります。
あまり頑張らないでというのが原則ですが、食事を摂ること、体重が減少しないようにすることだけは頑張ってください。
【休職から復職に向けて】
患者さまが復職をしたいと思っていらっしゃることが前提で以下、お話をしていきます。
復職に躊躇されているのであればその問題を先に解決しておく必要があります。復職が怖くなってしまうからです。
1.身体を動かす、作業をしてみる
身体のだるさが多少改善してからは、休養に飽きてくることが多いものです。
感覚的なもので、どの程度の期間でここまで来るのか明記できないのですが、身体が動くようなってから、少しずつ、外出をおすすめしています。
外出してみると、集中出来る時間が短い。短時間で疲れてしまう。翌日まで疲れが残る、等の症状がわかり、体調がご自身で考えているほど良くなっていないことを自覚される方が多いようです。
この感覚が大切で、実際に動けると思った時間や量を減らして、ご自分の体調の変化を試していただきます。
症状は、ちょっとずつ良くなったり悪くなったりしながら、薄皮をはぐように良くなっていくため、なかなか良くなった自覚が持てないことが多いのですが、上記のように出来ることが目に見えて分かるようになると、体調と回復の実感をもてるようになってきます。
2.外に向かって
少し体調の回復が自覚できてきたら、次には、生活の立て直しです。
一日ごろごろ休んでいたりつかれたらすぐに横になれる状態から、ちょっとずつ活動する範囲を広げることを提案しています。
目標はあくまで元もといた職場に戻ること(現職復帰の原則)ですので、それに基づいて、ある程度の時間、まとまって仕事が出来ることをめざします。
そのための計画として、一足飛びにやるのではなく、細かく段階を区切って、おこないます。
このあたりは、患者さまの「感覚」を伺い、相談しながら、行いますが、多くの場合、公共の機関(図書館など)に短時間から毎日決まった時間にいって帰ってくるということもおすすめしています。
さらに、症状が改善した折には、第三者機関に依頼して、環境調整をすることもあります。
3.復帰のための準備が出来るかどうかの判断の基準は
a.普段読んでいる書籍や文書(特に事務職)を読んでいて頭にはいるか?
b.疲れやすさ、だるさがあるとしても、何とか半日持つか。
c.集中力が持つか。
d.規則正しい生活が出来るか。仕事に行く時間帯におきていられるか?
などさまな事を勘案して行っていきます。
【復職のため会社側と接触】
実際復職となると、不安感が増してしまうことが多々あるものです。
まずは、会社の復職規定について聞いてみることです。
さらに、どの程度の期間休めるのかも聞いてみるといいと思います。そして、給与保証などについても。
一般的には、そろそろ復職が可能だろうというときに、主治医より「復職が可能」、あるいは、「自宅療養が不要」な旨の診断書を提出することが多いと思います。
会社によっては、独自の復職プログラムを持っている事もあるため、ご確認下さい。
休職者の復職について、企業側が復職に積極的で、専門職のサポートチームがあり、休職中の患者さまと接触を持ってくる場合です。
休職時から、産業保険のスタッフが、関わりを持ってくれるようであれば、復職へのハードルが低くなります。
【リハビリテーションのための出勤】
職場の環境調整が済んだら、いきなり復職ではないのです。
企業によってはリハビリテーションのための出勤の制度があります。これは、企業側に判断がゆだねられており、短時間勤務から始めるのが良いと考えております。
その間、復職扱いなのか、それとも休職扱いなのか、は企業次第です。
*症状が改善し始めてから、リハビリテーションのための出勤をし、職場に戻って仕事をする時期は、思ったより疲れます。この間は、当院では1週間に1回来院していただいて、経過を細かく伺います。
勤務時間の配慮(残業をしないなど)、勤務内容の軽減なども職場で行っていただければとても有りがたいと思います。
以上の流れで復職を勧めて参りますが、特別な治療ではなく、一般外来で、精神療法的アプローチを行っていくのが当院での復職までの治療です。
八戸マナクリニック 心療内科 精神科 院長